外国人技能実習生に対する法的保護情報講習について
1)講習の目的
開発途上国等からの外国人技能実習生の保護を目的として、入管法の改正等により下記の研修
の座学の一部で実習生に対して1日間(8時間)で外部の専門講師より通訳を通して行われる講習。
法的にはこの座学の講習を受講修了しなければ実務研修が行えないこととなっており、実務研修は
講習終了後に実習実施企業等との雇用契約での労働となり、労働保険・社会保険等の適用となり日
における労働者としての法律保護を受けることとなる。これは今まで安い労働力と言うことで過酷な
労働と最低賃金にも満たない条件で労働してきた外国人労働者を保護する目的と、人権保護をより
推進しようとするもので、外国人技能実習生制度の本来の目的である高度な技術・技能等の取得を
通じて、技能実習生の母国等での経済発展にも寄与するものである。
(財)国際研修協力機構 JITCOのHPより(改正前)
改正後の変更点
研修終了後技能実習を開始する場合は、入国前に実習生と受け入れ先機関等と雇用契約が締結
されている必要があります。
上記の研修→技能実習1号(1年目)
技能実習→技能実習2号(2年目)、技能実習2号(3年目)
と言うように入管法は区別しています。
また、座学は1/6以上となり、一定要件ではそれが緩和され12分の1以上となる。 雇用関係は
座学(初期講習)修了後から、雇用関係の下での実習となり、労働関係法が適用。
労災保険・雇用保険の適用となり、健康保険・厚生年金等の適用なる。
技能講習1号から技能講習2号に在留目的変更をする場合に、一定の要件が必要となりました。
@同一機関、同一職種 現在のところ66職種が認定されて、全ての職種ということではない。
A技能実習成果の評価を受ける必要がある。
国の技能検定試験、JITCO認定による評価試験
B受け入れ機関等技能実習計画を作成して評価を受ける必要がある。
技能実習2号が適用される対象職種が現在のところ66職種123作業に限定されているため、その
作業に該当しない場合は、1年間の技能実習期間となる。
技能実習2号移行対象職種 66職種123作業
2)座学(初期講習)の講習内容
講習すべき科目
@日本語
A日本での生活一般に関する知識
B入管法、労働基準法、不正行為への対応方法その他技能実習生の法的保護に必要な情報
C @からBに掲げるものを除くほか、日本での円滑な技能等の習得に資する知識
上記のうち、第三者的立場である専門家によって行うのがBの法的保護情報に関する講座で
す。
これにより受入れ企業等のコンプライアンスがこれまで以上に求められることになります。
3)法的保護情報に関する講習の内容
@ 3.5時間 制度と仕組み(入管法等)、不正行為への対応
A 3.5時間 労働条件、災害防止・健康確保
0.5時間 相談先及び公的保険等概要
B 0.5時間程度 質疑応答
外部講師の要件等:申請取次行政書士・社会保険労務士等でJITCOの講習を修了したもの
外部講師に対するセミナーの講習は1日間で6時間程度行われるもので、行政書士に関しては
午後の3時間で労働条件、 災害防止・健康確保について、社労士に関しては制度と仕組み(入
管法等)、不正行為への対応 が行われる。両方を保有している私は行政書士の方の労働条件、
災害防止・健康確保を受講した。内容は基本的なことでこうしようテキストの内容説明であった。
@〜Bの講習は一人の講師が行うのが原則となっている。
4)上記講習についての私見
技能実習生に周知したい内容が、実習受け入れ機関等と実習生の雇用関係をベースとした法
的保護について周知させることのため、労働関係について経験・知識の乏しい行政書士に労働条
件、災害防止・健康確保について講習させるのは無理がある。特に、労働の対価である報酬につ
いて関心が強い実習生に総支給額から控除する税金・保険料等について、具体的な数値を示し
て説明するのは無理があると言える。また、労働安全・労働衛生についての説明と自習先でのそ
れらの留意点を説明するには安全衛生についての経験のない社労士では無理である。特に実習
生の労働中並びに宿舎等での安全を守り、事故等から保護するには実習先の所轄監督署等の協
力も必要と言える。
労働保険・社会保険に関しては、どのような給付を受けれるかを説明した方がいいと思う。 保険
制度に関しては国等によって異なるし、日本では一般常識になっていることが、他国では常識にな
っていない場合がある。年金制度に関しても短期期間しかいない外国人技能実習生にも適用があ
り保険料納付義務があるが、その給付制度と各国の年金制度との関連の説明も必要となるとい
る。海外での就業者が増加している中で、年金制度に関しては世界共通のシステム等の構築 が
必要となると言える。
5)法的保護講習等について主管しているのは財団法人国際研修協力機構 JITCO
JITCOの行う研修・技能実習事業(要約)
開発途上国等の経済発展と産業振興の担い手となる人材を育成するため、青壮年の働き手に先
進国の進んだ技術・技能や知識を修得させようとするニーズに的確に応えるため、諸外国の青壮
年労働者を一定期間日本の産業界に受け入れて産業上の技術・技能・知識を修得してもらう「外
国人 研修・技能実習制度」です。
この制度は、研修生・技能実習生への技術・技能移転を図り、その国の経済発展を担う人材育成
を目的としたもので、日本の国際協力・国際貢献の重要な一翼を担っています。
@研修生・技能実習生にとっては、技能修得と帰国後の能力発揮により自らの職業生活の改善向
上や産業・企業の発展
A研修生・技能実習生を派遣する外国の企業にとっては、修得した能力・ノウハウの活用による品
質管理の徹底・職場規律の徹底・コスト意識の高揚等企業の事業活動の改善や生産性向上
B日本の受入れ企業等にとっては、外国企業との関係強化、経営の国際化、社内の活性化、生
産への貢献
6)入管法等の改正について
「出入国管理及び難民認定法」(以下「入管法」という。)の改正法が成立し、2009年7月15日に公
布。管法改正には、(1)新たな在留管理制度の導入、(2)外国人研修・技能実習制度の見直し、(3)在
留資格「就学」の「留学」への一本化などが盛り込まれています。
法改正の目的
@新たな在留管理制度と不法就労の防止
A外国人研修生への労働法令の適用
今回の改正により、従来の外国人登録法に基づく外国人登録制度が廃止され、入管法のもとで入
国管理と在留管理を一本化する新たな在留管理制度が創設されます。 新たな在留管理制度のも
とで、3月を超えて在留する外国人(中長期在留者)については、一定の在留資格を除き「在留カ
ー ド」が交付されることになります。
久住事務所
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